視聴覚認知能力を利用した搾乳牛の群管理技術の可能性

摘要

動物の思考について語るとき，決まって登場するのが「賢いハンス」である。 ハンスは今世紀はじめにドイツに実在した馬で，引退した教師である飼主の教えを受け，たし算やひき算，かけ算，わり算さえもできるようになったと信じられた馬である。 ハンスは正解の数だけ前足で地面を打ちならして解答したけれども，簡単な問題も難解な問題も同じくらいのスピードで解答することに疑問を抱いたひとりの心理学者がいた。 そして彼によって，実はハンスは数字を見ていたのではなく，出題者が正解の数になったときに無意識に示してしまうかすかな頭の動きに対して反応していたことが突き止められた。この出来事は，動物に複雑な思考能力を認めることの誤りを示す証拠とされ，いわゆる行動主義の流れを強めるきっかけとなり，ついには，動物に簡単な意識的思考が存在すると考えることさえも否定されるに至った。