分娩後10日目に乳熱を発症した乳牛

摘要

乳熱は，分娩直後の泌乳開始に伴う急激な乳房へのカルシウム流出の増加に起因する低カルシウム血症が主な原因であり，分娩前後に多発する。 本症は体温低下と食欲減退，起立不能が主な症状であり，胎盤停滞や第四胃変位，ケトーシスの発症要因となる。 近年，予防処置として，従来から行われている分娩前のどタミンD_3の筋肉内投与と陰イオン化飼料給与に加えて，生理的な低カルシウム血症の軽減を目的とした分娩後におけるカルシウムサプリメントの経口投与が普及している。 今回，分娩後からカルシウムサプリメントによる低カルシウム血症の予防処置を行ったにもかかわらず，分娩後10日目に乳熱を発症して死亡した乳牛について紹介する。