摘採時期が異なる茶園に設置した性フェロモントラップによるチャノホソガの発生消長

摘要

1997年4～12月に鹿児島県川辺郡知覧町の摘採時期が異なる茶園7カ所にチャノホソガの合成性フェロモントラップを設置し，誘穀消長と産卵，ステージ別寄生消長および管理作業との関係を調査した。調査期間中に認められた発蛾最盛期は，早場地帯の汐見原，大隣，やや早場地帯の加治佐原，西垂水において7回，やや遅場地帯の茶業試験場，厚地，遅場地帯の八尻原で6回と同一町内で発生回数に差があった。 誘殺数は，早場産地の汐見原，大隣，やや早場産地の西垂水，加治佐原の‘ゆたかみどり’栽培地点で多く，‘やぶきた’を栽培していたやや遅場および遅場の茶業試験場，厚地，八尻原では，秋期に誘殺数が漸次増加し，品種，管理作業の類似した地点間で誘殺パターンが共通している傾向であった。 発蛾最盛期と1～2葉期が合致した場合に産卵数が多い傾向を示した。 誘殺数と産卵数との関係に有意な正の相関が認められた。 以上から，チャノホソガの合成性フェロモントラップによる雄成虫のモニタリングは，管理作業や品種構成がほぼ共通した産地であれば少数の設置でモニタリング可能であり，誘殺消長は，発生時期はもとより産卵数（被害発生量）の予測が可能であることが示唆された。 防除に際しては，発生消長とともに新芽の生育状況（発蛾最盛期の新芽生育ステージ）を考慮することが重要と思われた。