腸上皮細胞接着活性を有するセグメント細菌の生態学的性状と腸粘膜免疫の活性化腸粘膜接着細菌が腸機能を活性化する

摘要

腸内フローラが健康や疾患と密接に関係していること が多くの人に理解されるようになり，本分野の研究はま すます佳境に入ってきた感がある.抗生剤を多用することによって起きやすいClostridium difficile再発性腸炎 などの疾患が，健常なヒトの便，すなわち腸内フローラを経口的に移植することによつて劇的に改善したという 報告は記憶に新しいところである.これまで腸内フロー ラと健康、疾患のかかわりについては病態者と健常者の 腸内フローラの比較と動物モデルでの基礎研究がなされ てきた.前者は嫌気培養法から分子生物学的定量法と進展著しい次世代シーケンサーによる網羅的解析手法によ る腸内フローラ構成の解析，後者は1940年代に開発さ れた無菌化ネズミのノトバイオ一ト化と病態モデル動物 による腸内菌と宿主応答の解析である.いずれも高度な 技術開発の恩恵を受け，腸内フローラと宿主動物，特に ヒトの健康との関係力5徐々に明らかになりつつある.本 セミナーでは，後者の研究のなかで腸免疫システムに極 めて強いィンパクトをもつことが明らかになったネズミ の常在性腸内細菌種，特にセグメント細菌（Segmented filamentous bacteria; SFB)について腸内フローラの構 成員としての生態学的な特徴と種々の腸粘膜免疫システ ムへのかかわりを中心に紹介したい.