海洋性細菌由来シァル酸転移酵素の機能解析と利用: シァル酸含有糖鎖の発酵生産に成功

摘要

糖タンパク質や糖脂質などの複合糖質の糖鎖は生体内できわめて重要な機能性分子として利用されており，複合糖質糖鎖の代謝異常が疾病の直接的な原因となっていることなどが知られている．これらの生命現象の多くでシァル酸と呼ばれる酸性糖が重要な役割を担っている．セレクチンとシアリルルイスⅩと呼ばれるシァル酸含有糖鎖を介した白血球の細胞接着やリンパ球のホーミングにおける役割などがその一例である．また，昨今，新型インフルエンザウイルスのパンデミックが危惧されているが，いずれのインフルエンザウイルスの感染においても，ウイルスの表層に存在するへマグルチニンが宿主の細胞表層に存在するシァル酸含有糖鎖に結合して宿主細胞に侵入すること，宿主域が異なるインフルエンザウイルス間では，それらウイルスのへマグルチニンが認識するシァル酸の分子種やその結合様式が異なることが明らかにされている．