果樹の新技術、新発見（83）ヒリュウ台木利用による温州ミカンの高品質化

摘要

ヒリユウはアメリカでわい性台木としての特性が見出されてから、世界の柑橘生産国で注目されるようになった。 わが国では、大学、国、県の試験研究機関でヒリユウに関する研究が行われており、いずれも安定してわい化効果を示し、果実品質も向上している例が多い。 　 極早生温州は、カラタチ台であっても一般的に弱樹勢のものが多く、わい性台のヒリユウを使用すると更に衰弱して生産性が劣ってくる。 そのため、極早生温州ではヒリユウの使用を避けることが好ましい。 ただし、土壌が深く肥沃な園で、しかも樹勢が極早生温州として旺盛な品種に限りヒリユウを台木として利用する事も考えられる。 極早生温州でヒリユウ台を検討した試験例は比較的少ないが、ヒリユウ台はカラタチ台に比べ、生育が劣り弱樹勢化の傾向にある。 果実品質は着果程度や年次により異なるが、山川早生では、カラタチ台に比べヒリユウ台の着色がやや早い傾向にあるものの、果実品質にはほとんど差が認められていない。 一方、日南1号では、カラタチ台に比べヒリユウ台がやや大きい果実を調査してあるにもかかわらず、ヒリユウ台はカラタチ台に比べ着色が早く果皮色は良好で、糖度が高いうえ、滅酸も早くなって果実品質が著しく向上している。