幹模様の強い個性に見た、文人盆栽としての曲

摘要

見せたいシャリ、水吸いの芸は限定され、文人樹形としての姿もおおよそ見えてきた。 しかし、文人構想を立てる上でひとつ大きな問題を抱えていた。 新正面の位置で幹の動きを積極的に強調するなら、左流れを意識した姿に仕立てたい。 ところが、芯となるべき太い枝は樹冠部付近で大きく右方向に変化しており、現状のままでは樹の流れを損なう恐れがあった。 枚数少なくまとめる文人樹形であっても、流れに反する枝としてこの太枝を抜くと、枝群は樹冠部のみに集中して幹模様が嫌みとして捉えられかねない。 ならば、この太枝の伸びる方向を元から変えて左流れの落ち枝として作るのが得策と言えよう。しかし相当の古さと太味を持つ枝だけに、いかに真相と言えど作業は容易なものではなかった。