わが岡山のマスカット〔第20回〕－風土，人，技術－【マスカット温室の進化（その3）】

摘要

1973年のオイルショックに始まる油類の高騰は，たちまちマスカットの加温栽培の暖房経費を押し上げた。 栽培家や温室メーカー，関連の資材業者はいわゆる「省エネ対策」に努め，種々の省エネ技術が世に登場した。先回述べた連棟化や大温室への動きも，暖房効率の向上が一つの大きな原動力であったし，以下に述べる多重被覆や変温管理などもその主なものである。また，御津町吉尾の大内稔氏が導入した地中蓄熱方式（日中の暖気を地下のパイプに通して地温を高めておき，夜間はその熱を室内に送り出す。本連載第14回参照）や，水封マルチによる保温（水を入れた透明フイルムの筒を地表に多数置き，日中の太陽熱で暖めておく）なども試みられたが，これらは普及しなかった。