一酸化炭素による微小血管機能の制御--肝臓におけるin vivo/in vitroのdiscrepancy--

摘要

近年著者らは生体内で生成されるガス状物質の一つである一酸化炭素（CO）が正常の肝臓で血管拡張物質として作用することを見出した。 肝臓の毛細血管に相当する類洞はわずか数cm H_2Oの圧格差で血流が維持されており, その血管抵抗は未知のメカニズムで恒常的に低く保たれていると考えられてきたが, 内因性に生成されたCOがそのメカニズムを担っていると思われる。 またCOは肝実質細胞の重要な機能の一つである胆汁分泌の調節にも関与することが示唆された。 肝臓はその構成細胞の一つ一つを初代培善して，in vivoで得られた知見をin vitroで検証することが比較的容易である点が特色である。 しかし実際には，in vitroでの培養系を用いた実験結果から導ける結論と，異なる細胞同士が社会を形成する臓器や個体レベルで生じる結果との間には大きな隔たりがあることも事実である。 本稿では, COによる肝臓機能の制御を明らかにする過程で生じたこのようなdiscrepancyを浮き彫りにしつつ，このガス状物質の生理作用に関する研究の現況と問題点について概説する。