施設キユウリと卜マ卜におけるIPMのための タバコカスミカメ利用技術マニュアル:研究の背景と今後の普及、実用化に向けて

摘要

総合的病害虫、雑草管理（IPM)を推進するうえで， 化学殺虫剤を削減しつつ害虫防除を行うために，天敵昆 虫類の利用は中心的技術として期待され続けている。平 成7年にオンシッッヤコバチとチリカプリダニが天敵昆 虫類として初めて農薬登録されて以来，施設栽培野菜の 害虫防除を目的として，様々な天敵昆虫類が生物農薬と して登録され，その使用量は年々増加し，一部の作物-地域ではその利用が定着し顕著な効果をあげるようにな つてきている。また近年では，野外に分布する土着の天 敵個体群の保護、強化を行つたり，野外から採集した天 敵を増殖放飼する特定防除資材（特定農薬）としての利 用も広まってきている。その一方で，普及が遅れている 作物、地域が存在するのが実情である。例えば，我が国 の施設栽培のキユウリゃトマトにおいては，ァザミゥマ 類ゃコナジラミ類によって媒介されるウィルス病の多発 にともない，天敵利用による減農薬栽培技術の普及が遅 れている。特にキユウリ黄化えそ病を媒介するミナミキ イロァザミゥマ，トマト黄化葉卷病を媒介するタバココ ナジラミが大きな問題であろう。これらウィルス媒介虫 は低密度でもウィルス病を媒介するため，ウィルス病の施設内でもまん延を防止するためには極々低密度に管理 する必要があり，動物質の餌がないと生きていけない従 来の天敵昆虫類では十分な密度抑制効果が得られない。 しかし，これら害虫種では薬剤抵抗性が発達し，化学農 薬による防除も効果を得にく くなってきている。このた め，改めて天敵昆虫類による害虫防除技術の確立が喫緊 の課題として求められている。