昆虫における遺伝子組換えは,RUBIN and SPRADuNG(1982)がキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で,ア因子というトランスポゾン(=ゲノム上で位置を転移することができる「動く遺伝子」)を用いて初めて成功して以来,様々な昆虫で試みられ,現在では四つの昆虫目の20以上の種で,遺伝子組換え技術が確立されている(畠山,2005)。モデル昆虫であるキイロショウジョウバエの遺伝子組換え技術は,主に遺伝子機能解析の道具として使われてきたものであるが,農業害虫や病原性媒介昆虫では,これらを遺伝的に改変して無害化するという応用も目的として開発されてきた(O'BROCHTA,2005)。さらに,近年の昆虫ゲノム解析による遺伝情報の蓄積によって,遺伝的改変に利用できる導入遺伝子候補の探索が容易になりつつある。ここでは,昆虫の遺伝子組換えの現状,遺伝的防除への利用を目指した技術開発,実用化に向けた動向を紹介する。
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