マンゴーツメハダニの発生生態と日本における現状

摘要

マンゴーツメハダニOligonychus coffeae (Nietner)は,1996年に沖縄県病害虫防除所のハウスで発見されたのが,我が国における最初の報告である(江原ら, 1997).その後,鹿児島県奄美大島,徳之島,喜界島において本種の分布が確認されている(山口, 1998).マンゴーツメハダニは,マンゴーばかりでなく,チャやコーヒー,カンキツをはじめ85属以上の植物を加害する広食性のハダニであり(BOLLAND et al., 1998),本州への侵入が警戒されていた種の一つである.しかし, 2008年8月8日付で,千葉県が本種の発生に関する特殊報を出し,この懸念が現実のものになった.すなわち,沖縄県から千葉県に導入されたマンゴーの苗木と一緒に本種が千葉県に侵入したものである.その後の調査によって,幸いにも本種の分布拡大や継続的な発生は認められていないが,沖縄県で生産されたマンゴーの苗木は千葉県ばかりでなく,静岡県や埼玉県,北海道などにも販売されていると言われている.これらの地域のうち,特にチャの産地で7ま本種によるチャ樹への被害が相当に深刻であることに鑑みて,その発生には十分な注意が必要である.