インド洋の海流系

摘要

インド洋は世界唯一のミナミマグロの産卵場を有し，メパテやキハダなどの好漁場が形成されるため，水産にとって重要な海域である。 また，モンスーンの交代にともなって海流系が変化するなど，海洋学的にも興味深い大洋である。 インド洋の北にはユーラシア大陸が存在し，太平洋や大西洋と異なり，赤道海域で蓄えられた熱が北方の温帯 瑏労畮∮颏丐线ばれず，北方から亜寒帯系の冷水が南下することもない。このため，インド洋は熱のたまりやすい海域であり，これがユーラシア大陸との間の温度差を著しいものにし，これに起因してモンスーンが発達する。 近年ではインド洋での貯熱量の変動が，エル，ニニーニヨなどの全球的な気候変動に影響を及ほしていると考えられてきている。 しかしながら，太平洋や大西洋と比べ，先進諸国から距離的に遠いインド洋は，これまで観測が充実していないため，海洋の変動実態が不明瞭な海域であった。 このため，平成元年度から10年度にかけて，科学技術庁のプロジェクト研究「アジアモンスーン機構に関する研究」が各省庁，大学との共同で行われた。遠洋水産研究所低緯度域海洋研究室も本プロジ工クト研究に参加し，10年間で約5000点に及ぶ海洋観測を実施し，他機関が行った観測デ⊥夕も含めて解析を行うことにより，インド洋の海洋構造解明とその変動実意の把握に努めた。 また，このプロジェクト研究の成果をふまえ，インド洋における観測の継続と熱輸送を定量的に明らかにするための調査い研究を地球観測フロンティア（海洋科学技術センター）との共同研究により，平成11年度から実施している。 本編では，これまで低緯度域海洋研究室で行ってきた研究成果を元にインド洋の海流系についての概説を行う。