腎疾患患者用の低蛋白質，高エネルギー食パンの主観的ならびに客観的評価

摘要

慢性腎不全の治療，では，食事療法が第一である。 低蛋白質，高エネルギー食とすることによって腎機能の低下を抑制できることは，すでに報告されている。この食事療法に一般の食品を用いて蛋白質制限を遵守することは，極めて難しく，また，必要なエネルギー摂取ができない。 これらの条件を満たずためには，特別用途食品の中でも低蛋白質食品ヤ高エネルギー食品の利用を考えなければならない。 今日，主食として，米や麺類については，低蛋白質食品，高エネルギー食品が開発され，食事療法上にも利用されてきている。 しかし，主食としてのパンを低蛋白質，高エネルギーのものに作ることは，極めて困難である。 なぜなら，パンのふくらみを作るためには，グルテン蛋白が必要であり，高蛋白質の強力粉が不可欠となってくる。 強力粉を使用して作ったパンは，蛋白質含量が多いため，腎臓病患者に利用ずることができない。 今回，筆者らは特別用途食品である蛋白質0．4％のでんぷん小麦粉を用いて食パンを試作し，主観的評価として，官能検査を実施し，客観的評価としてテクスチャー測定と色差測定を行った。 二れより若干の知見を得たので，報告ずる。本論文で試作したパンは，特許第3104022号で認可されたものである。