移入哺乳類の現状と対策

摘要

現在日本では，紛れ込み，天敵としての導入，飼育個体の逃亡、遺棄といった経緯によって，38種類にも及ぶ移入哺乳類が確認されている．これらの移入哺乳類が引き起こす問題としては，商品作物被害などの人間生活への影響，人畜共通感染症の伝播，交雑による遺伝的浸食，競合による在来種の排除，捕食による在来種の減少，植生の改変などがあり，移入哺乳類の存在は，生物多様性を保護するうえで大きな障害となっている．従来の日本の移入哺乳類対策は，対症療法的な有事獣駆除以外はほとんど実施されてこなかった．狩猟圧による管理も試みられるようになったが，その効果も実質的には期待できない側面がある．今後の対策としては，移入哺乳類の正確な現状把握をもとに，緊急を要する動物の捕獲などの具体的管理施策を実行すると共に，防疫体制の強化輸入動物の検疫体制の整備，飼育動物の逃亡。遺棄を管理する薪しい法体制の整備が必要であろう．