植物をねらう生物の戦略と植物の防御戦略

摘要

植物は，一度大地に根を張って成長を始めると，ま ず間違いなく同じ場所でザ生を過ごすことになる。気 温.湿度変化といった物理的なストレスも，病原体の 感染や昆虫による食害など数多くの生物学的なストレ スも受けるだろう。能動的な移動能力を有さないため に，植物の環境への生存適応能力はきわめて重要であ る。太古の昔から，植物はさまざまな生物とのせめぎ 合いを繰り返し生きながらえてきた。その中で，わず かな比率で生じる変異体を含みながら，微妙なバランスを保ち，然の多, をなしてきたただし，としてころ地球なお的な化によ,ゆおでる種あるいは変異体が生き残り，新たなバランスによ る生態系を構築してきたと考えられる。この枠の中に 人類が登場し，農耕を行うようになった。さらには，産業革命を推し進め，ここ200年間にわたる近代農業 の発達が，このバランスに影響を与えてきた。高収穫 のために，同一環境下の豊富な栄養条件の下で，同一 の遺伝的性質を有する品種を大規模に栽培することは， 植物を取り巻く生物環境にとって劇的な変化であった。