高山での虫媒花植物：その繁殖と生活型

摘要

多くの高山植物では，イネ科やカヤツリグサ科のように風媒でしかも栄養繁殖が盛んな種を除いて，虫媒が主要な送粉手段である．高山植物が葉に比べて花が大きく，色鮮やかであり，さらに萄葉や讐筒，花冠が保温や昇温の機能をもっているものがあるのはこのためである．高山植物にとって送粉者が重要であることは，熱帯高山のエスベレチア属では，多様な送粉者によって14種もの種が維持されていること，またヒマラヤの高山植物では，温室型，提灯型，綿毛型，パラボラ型，傘型など，訪花昆虫との密接な関係を推測させる多様な生育型が見られることなどからも明らかである．高山における送粉者は，マルハナバチ類と双趨類が多いが，熱帯高山では鳥も重要な送粉者となる．ジャイアントロゼットや大形の温室型植物では種子繁殖が重要で，熱帯高山のロベリア，テレキイでは200万個の種子，セイタカダイオウでは2万個もの花と種子が生産される．