2013年から2014年に大流行した 豚流行性下痢（PED)の特徴と最近の愫

摘要

豚流行性下痢(Porcine epidemic diarrhea ； PED)は水様性下痢を主徴とする豚の急性ゥ ィルス感染症であり、家畜伝染病予防法により 届出伝染病に指定されている。病原はコロナゥ ィルス科アルファコロナウィルス属に分類される PEDウィルスであり、感染豚の糞便に大量に排 泄されたウィルスは直接または汚染媒介物を介し た間接的な経口感染により豚から豚へと伝播す る。哺乳豚から繁殖豚まで全ての日齢の豚が感 受性を示すものの、哺乳豚では症状が重篤であ り、特に10日齢以下の子豚では致死率が100% に達することもある。日齢が進むに従って致死率 は低下し感染耐過する豚が増加するが、分娩 母豚が発症すると泌乳量の低下ゃ泌乳停止に 陥るために哺乳豚の飢餓と脱水が増悪され哺乳 豚の致死率を引き上げるほか、感染耐過した離 乳豚では発育が遅延する。このように、PED発 生による養豚経営への被害は甚大である。2013年10月に国内で7年ぶりに発生した PEDは、初発から約10ヶ月後の2014年8月ま でに38道県の817農場に感染が拡大する未曾 有の流行となった。また、同期間では、北米-中南米の国々でPEDが初めて流行するととも に、PED発生が以前より確認されていた東アジ ァの国々でもPED発生件数が急増した。2つの 大陸にまたがる同時多発的なPEDの大流行による養豚産業への被害は甚大であり、本病は豚 肉生産に深刻な影響を及ぼす豚の新興、再興 感染症として国際的に認識されるようになった。 なぜこのような国際的な大流行に到ったの力、、 その要因を解明するために各国で多くの研究が 実施され、今後の流行予防に参考となる新しい 知見が蓄積されつつある。