水田土壌における炭素循環と微生物群集

摘要

わが国の風土に適応した水田稲作は，畑作に比べて持続的で収量が高く，有機炭素蓄積能，生物多様性に優れ国土の保全にも寄与している。しかし，地球温暖化の観点から，水田からのメタンの発生が危供されている現在，地球環境にも配慮した水田圃場の新たな管理が求められている。水田の高い肥沃性とメタンの発生はいずれも，水田における有機物の供給とその後の分解，分解に関与する微生物群集と深く関わっている。本研究では，①水田に供給される各種有機物の種類と供給量を定量的に評価し水田の肥沃性の実態を明らかにするとともに，②各種有機物の微生物分解と，その結果生成した二酸化炭素、水溶性有機物の土壌中での動態と水田の肥沃性に及ぼす影響，加えて③水田から発雷するメタンの起源と土壌中での動態を明らかにした。ついで，④水田各部位に生育する微生物群集の特徴と多様性を評価するとともに，水生生物群集の生態，水田のウイルス群集の特徴を明らかにすることにより，水田における炭素循環と土壌肥沃性，生物多様性の実態解明を目的とした。