リアノジン受容体をターゲットとする新たな殺虫剤フルベンジアミドの生理活性

摘要

新たな作用機構を有する殺虫剤は，抵抗性害虫の発生を防ぐとともに，既存剤への抵抗性を獲得した害虫の有効な防除資材となるばかりでなく，活性向上による薬量の低減や，高選択性の付与による毒性の軽減など，安全な食料生産に対する社会的要求に応えるための手段となり得る．これまでに細胞内カルシウムの重要な制御因子であるリアノジン受容体の機能を撹乱する化合物が農薬，特に殺虫剤となる可能性はすでに複数の研究者により指摘されてきたが，リアノジンを含有する豆科植物根抽出物が農薬として利用された例（Ryania，1997年EPA登録失効）を除けば，今日まで，リアノジン受容体を標的とする有機合成農薬が開発された具体例はなかった．新規殺虫剤，フルベンジアミド（Fig. 1）はリアノジン受容体を活性化することで殺虫効果を示す初めての化合物である．本稿では，フルベンジアミドの作用機構を例にリアノジン受容体の新たな殺虫剤標的分子としての可能性について概説する．