北海道上ノ国人工湿地における重金属処理湿地性植物の重金属吸収特性

摘要

北海道上ノ国町に建設された重金属処理を目的としたわが国最初の本格的人工湿地において，湿地性植物であるPhragmites australisおよび Typha latifoliaへのMn,Fe，Zn，Cuの取り込み特性について調べた。本研究で扱った重金属の種類およびその濃度では，重金属類摂取による光合成速度や気孔コンダクタンスへの目立った影響は見られなかった。Typha latifoliaの葉に著しいMnの蓄積を示したことは, Typha latifoliaは Phragmites australisよりも光合成速度および気孔コンダクタンスが大きく，夏から秋にかけてMnを蓄積した結果と考えられる。Mn処理を必要とするシステムにはPhragmites australisよりもTypha latifoliaの個体数を増やすことが有利である。大部分の重金属類は植物の根圏にとどまっていたが，Feがとくに顕著であった。これらの重金属類が根圏にとどまる理由は直接光合成と関係せず，上部器官の保護のための植物個体のストラテジーによると思われる。両種へのZnの取り込みは比較的低濃度であり，植物の全部位に拡散しようとする傾向がある。CuはTypha latifoliaよりもPhragmites australisに蓄積しやすい傾向がやや認められた。