安全性の高いアデノウイルスベクターの開発にむけてアデノウイルスベクタ一によって惹起される自然免疫誘導メカニズムについて

摘要

アデノウイルス(Ad)ベクターは既存のベクターの中では最も遺伝子導入効率に優れており、in 。への遺伝子導入も可能なことから、遺伝子治療用ベクターとして沉用されている。しかしながら、Adベクターを生体へ投与した場合に生じる免疫応答が副作用として問題になっている。Adベクタ一を生体へ投与した場合に生じる免疫応答は、（1)投与直後に生じる自然免疫応答、（2)投与1-2 週間後に生じる獲得免疫応答に大別される。Adベクターによる自然免疫応答は、急性の炎症性サイト力インやI型インターフェロンの産生を特徴としているのに対し、獲得免疫応答は、抗Ad抗体の産生やAdあるいは外来遺伝子に対する細胞傷害性T細胞の誘導、またそれに伴う組織障害を特徴としている。獲得免疫応答に関しては、ウィルスゲノムをほぼ全て欠損させたヘルパー依存性(Gutted) Adベクターや力プシド改変Adベクターを用いることにより、免疫応答の回避が可能である。しかしながら、自然免疫応答に関しては、分子メカニズムも解明されておらず、これを回避可能なベクターも開発されていないのが現状である。したがって、Adベクターの全身投与による安全性の高い遺伝子治療を実現するためには、Adベクターによって誘導される自然免疫応答のメカニズムを解明し、回避する方法の確立が必須となっている。