ドイツ製造業の強さを支える部厚い産業クラスター

摘要

国際森林製紙団体協議会のCEO円卓会議(本号18頁参照)で基調講演を行ったドイツ経済研究所のミカエル·ヒューザー所長によれば、最近の欧米社会で顕著に見られる反グローバル主義、自国第一主義への回帰現象には次のような背景があるという。すなわち、①1990年代には経済成長の伸びより製造業の伸びの方が大きかったが、最近それが逆転②製造業の雇用が減少し、収入の低いサービス業の雇用が増加しているため、雇用は維持されているものの収入は減少③デジタル化の進展により生産方法が変化し、スキルの低い労働者の雇用が減少④先進国において所得が伸びない労働者に対する所得政策や福祉政策が不十分—などだ。ヒューザー所長は、そうした中にあってドイツ産業の強みが「製造業のサービス化、製造とサービスを組み合わせた共同作業により顧客ニーズの変化に素早く対応できる」点にあると指摘する。さらに「①歴史的に部厚い中小企業の塊が存在②労働組合が飞土会の共同構成員として位置づけられている③労働者の職業訓練·再訓練の制度が整備されており、全国に産業クラスターが200以上も存在。米国はシリンコンバレーとボストンだけで、中国にはそういうものはない」と述べ、ドイツ製造業の競争力は産業クラスターによって支えられていると説明した。EU内で際立つドイツの存在感には、それなりの理由があるということのようだ。