ライン•ビルダ一は製造業IoT化の一翼を担い得るか

摘要

IoT革命に関して，製造業では.ドイツの"Industrie 4.0"に代表される生産デジタル化が進められている（"Smart Factory")。企業ぽシステムと生産ラインの統合による，市場需要に即応したマス•カスタマィゼーションはトヨタ生産方式のIoT版であり，生産関連データのAI解析により最適生産方法を割り出して生産ラインをコントロールする試みは，ヒ卜に依存する曰本流「カイゼン」のデジタル化ともいえる。製造業におけるIoT革命はいわば「トヨタ」のデジタル化を意図しており，1990～2000年代にトヨタ生産方式の学習では本家を凌げなかった欧米メーカーの逆転手であるといえ，また，中国等の新興メーカーはデジタル化された新鋭システムにより先進国との格差を一挙に詰めようとしている。曰本の製造業の強みは中堅•中小メーカ一にあるが，"Smart Factory"はトヨタ並みの経営資源を持たない中堅•中小企業には手が出せないもののように映る。しかし，彼等も「親の代で終わり」ということでなければIoT化は不可避の課題であり，優れた参謀•介添えが必要である。ライン•ビルダーは人手不足対策としてのロボッ卜導入の請負人として注目され，必ずしも全社がIoT革命に対応できる技術• ノウハウを有するわけではないが，中小，ベンチャー企業がIoT化に取り組む上でパートナーたり得る存在である。本稿では.まだ十分に人口に膾炙しているとはいえないライン•ビルダーとは何かを紹介しつつ.「絵」「ピジョン」として語られがちな製造IoT化を「誰が何のため行うのか」「誰が担うのか」等「具体的」に考える契機を提供したい。