状態図·七話

摘要

状態図は目的の物質がどのような温度·圧力·組成領域で存在するのかを知ることができるため，しばしば「物質の地図」と比喩される。熱測定の測定対象は絶対零度付近の極低温から数千℃の高温までの幅広い領域に存在しているため，正に状態図は「熱測定」を旅する研究者に必要不可欠な地図である。本書は雑誌『金属』76巻(2006年)10号から7回(その1～その7)にわたって掲載された「状態図·七話」をもとにまとめたものであり，状態図誕生の歴史や多元系·複合系の状態図及びいくつかの珍しい二元状態図が図·表に加え多くの写真と共に紹介されている。その1ではFe-C系の状態図，その2ではFe，Cに加えてH_2Oを対象とした超高圧状態図，その3ではジュラルミンに代表されるAl系合金の状態図が，それぞれ歴史的背景と共に述べられている。その4では計算状態図(CALPHAD:Calculation of Phase Diagrams)の黎明期について書かれており，筆者の若かりし頃の状態図計算のご苦労が記されている。その5ではⅢ-Ⅴ化合物と炭·窒化物の状態図の類似性が副格子モデルにより説明できることが示され，その6では金属-化合物系の状態図，特にFe-MnS系について詳述されている。最後のその7では逆行溶解型状態図や水ーニコチン系の奇妙な状態図等が紹介されており，状態図の種類の多さ，即ち，多元系化合物の多様性を改めて感じることがでさる。