大規模コンクリートアーチダムにおける堤体変位計測データの定量的評価手法と常時モニタリング状況

摘要

アーチダムの堤体変位はダム安全管理のうえで重要な判断材料である。本稿では過去10力年の動態観測データを基に統計的分析によりアーチダムの挙動特性を明かにした。また，堤体変位を目的変数に，ダム全体の挙動に影響を及ぼす要因である温度の季節変化とダム水位を説明変数とした重回帰式を算出した。そして，これを堤体変位の管理基準式として得られた管理基準値に，99.8%信頼区間である±3σを管理基準幅としたモニタリング事例を紹介した。当事例では，管理基準適用後約10年を経過しているが,ダム堤体の変位挙動はダム貯水位等の変化に追随しており，他の管理項目の観測結果とも照らして引き続き定常状態にあると判断される。