赤痢アメーバによる トロゴサイトーシス

摘要

赤痢アメーバによるトロゴサイトーシスは細胞の殺傷と組織への侵入にかかわっていると、バージニア大のK·S·Ralston博士らが報告している。(ネイチャー7497号)赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は、途上国でみられ、致命的になりかねない下痢症のアメーバ赤痢(アメーバ症)の病原体である。この寄生虫は、宿主の組織を破壊する能力を持つために、「histolytica」という名を付けられているが、この組織破壊はヒト細胞を直接的に殺す可能性が高い。ヒト細胞を殺滅する仕組みは不明であるが、このアメーバが毒性のエフェクターを分泌することで細胞を殺してから取り込むというモデルが一般的に受け入れられてきた。米国の科学者らはこのほど、生きているヒト細胞の断片を少しずつアメーバが取り込んだ結果、細胞内力ルシウム濃度が上昇して、最終的に細胞死が起こることを明らかにした。細胞が死ぬと、アメーバは細胞から離れ、取り込みを止める。アメーバがヒト細胞を殺すには細胞断片の取り込みが必要で、この取り込みが腸管組織への侵入にもかかわっている。