'東北沖地震は断層浅部の滑り' 「ちきゅう」使って科学的に実証

摘要

東北地方太平洋沖地震は、「プレート境界断層の浅い部分では地震性滑りは起きない」という従来の仮説が当てはまらないことがわかった。地球深部探査船『ちきゅう』による研究航海の成果。6日付けのサイエンスに関連論文3編が掲載された。巨大地震から約1年後の2012年4月1日。『ちきゅう』は、最も大きく滑ったとされる仙台から220キメーロトル離れた宮城県沖、日本海溝近傍のプレート境界断層を掘り抜く研究航海。JFAST(東北地方太平洋沖地震調査掘削)をスタートさせた。大水深での境界断層浅部からの地質試料(コア)取得、掘削孔の計測、境界断層を中心にした孔内温度を長期的(9カ月)に観測するための計器の設置。回収を行った。科学掘削での世界最高記録(掘削パイプの総延長)も樹立している。同航海で共同主席研究者を務めたジェームズ·モリ·京大防災研教授は「通常ならば3～4年の準備期間がかかるような調査。地震による断層とその周辺の残留摩擦熱が失われる前になるベくはやく掘らないといけなかった。大水深での掘削、孔内への温度センサー設置と回収は非常に難しい挑戦だった。多くの人が関わり今回のような良い成果を出せた」と話す。今回、水深約6900メートルの海底下850メートルまでの掘削試料、孔内の物理計測データ、プレート境界断層物質を用いた地震性滑りの再現実験、残留摩擦熱の孔内計測データを組み合わせて解析することで、プレート境界断層の浅部で地震性の滑りが起きていたことを科学的に実証した。