過熱水蒸気を用いたジルコ二ァ成形体の高速脱脂と脱脂挙動

摘要

過熱水蒸気は飽和水蒸気を加熱することで得られる気体である。近年その利用用途の拡大に注目が集まっている。過熱水蒸気はオーブンレンジへ採用されているなど家電としても普及している。ほかの利用用途として過熱水蒸気は殺菌，食品や木材の乾燥，廃棄物処理,炭素繊維強化ブラスチックからの炭素繊維回収リサイクルなど，さまざまな分野での応用も進められている。セラミツクス成形体の製造は，成形·乾燥·脱脂·焼成の工程で行われている。原料粉末を成形助剤（機バインダ）と均ーに混合して成形する。成形助剤は形を維持するために必要であるが，成形助剤の残留物が製品の性能に悪影響を与えるため，製造プロセス中に完全に除去されることが必要である。この成形助剤を除去するプロセスが脱脂プロセスである。また，脱脂はセラミックス成形品の特性さらに生産において重要な製造プロセスである。通常の工業生産で一般的な大気中で行われる脱脂では成形助剤の急激な熱分解と発生した分解ガスに伴う割れを防止するためきわめてゆつくり昇温（1〜30°C/時間）して，所定の保持温度で脱脂処理が行われる[4,5]。特に厚肉成形体や大型品，積層品，3Dプリンター成形品の場合は脱脂に200 h以上の時間が必要である[5]。また，脱脂工程に必要なエネルギーの割合は生産に関わる全消費エネルギーの43%と試算されるほど，消费ェネルギーが多い工程である[6]。さらに，脱脂工程で成形助剤が分解され発生したガスは有機物質が含まれており大気放出することができないため，800°C程度の温度で排ガス処理炉により無害な二酸化炭素や水に分解して排出している。このように脱脂時間の短縮は生産効率の向上ゃ排ガス処理炉の処理時間短縮による省エネ効果が期待できる。このため脱脂工程の短縮が望まれている。