学びなおしのアナログ電気電子回路第29回分布定数回路(伝送線路): その1

摘要

これまで述べた回路ではその電気的な特性が距離や物理サイズに依らないことを前提とした集中定数回路でした。しかしながらMaxwellの方程式で記述される電磁気学では時間微分だけでなく距離微分を含hでおり，電気的なパラメータは距離(位置)によっても異なり，信号は波動的な性質を有するようになります。おおよその目安として，信号の波長が伝送路の1/100程度の長さになると，波動的な性質を示すようになります。また,信号が伝送路を伝搬する場合は，信号が一定の速度で伝搬するだけでなく，信号の反射が生じることがあります。信号の反射が生じますと定在波が発生し，波がその場で振動するように見える現象が生じ，周波数(波長)によつてある点のインピーダンスが誘導性になったり容量性になったりする特異な現象が生じます。しかしながらこの現象を用いてインピーダンス変換をおこなうことができるようになります。また波の反射係数の絶対値が1以下であることを用いて0～∞のインピーダンスやアドミツタンスを半径1の円に写像したものがスミスチヤートです。スミスチャートを用いることで，広い範囲でインピーダンスやアドミッタンスを表示できるほか.図式的にインピーダンスマッチングを取ることが可能になります。これから数回にわたって分布定数回路(伝送線路)について述べる予定です。今回は分布定数回路(伝送線路)の基礎とインピーダンスについて述べ，その後，スミスチャートを説明し，反射や多重反射などのタイムドメインでのふるまいについて述べる予定です。