原子核に現れるクラスター構造とアルファ非弾性散乱による実験的探索

摘要

原子核の励起状態には、アルファ粒子や元の原子核より小さな原子核が、いわゆる「クラスター」と呼ばれる構成要素となった分子的な状態、クラスター構造を示す状態があることが知られています。軽い自己共役なA=4n原子核については、アルファ粒子だけで構成されるような状態の存在が理論的に予想されています。特に(12)~C原子核が3つのアルファ粒子からなるクラスター構造を示すと理解されているE_x=7.65 MeVに存在する励起状態は、"Hoyle state"と呼ばれる有名な励起状態であり、宇宙での元素合成において非常に大きな役割を果たしていることが知られています。本稿では、原子核におけるクラスター構造についての紹介と、原子核におけるクラスター構造を実験的に探索するための有用な手法としてアルファ非弾性散乱とその解析手法について紹介し、原子核におけるクラスター構造研究の現状と展望を簡単に述べます。