垂直配置マイクロホンアレーを利用した卓上突発音除去機能を備える遠隔会議システム

摘要

あらまし　本論文では，書類をめくる音や机をたたく音のような卓上で生じる突発性の雑音を高精度に除去す ることが可能な遠隔会議システムを捷案する．開発したシステムは，人の発話と卓上で生じる雑音の発生位置の仰角差に着目し，鉛直線上に並べた複数のマイクロホン（マイクロホンアレー）を用いて仰角方向の指向性を制御し雑音を除去することを特徴とする．逐次得られるマイクロホン入力信号から人の発話（所望音）が主の入力信号と卓上の雑音が主の入力信号を選り分け，指向性制御に必要な人の発話及び卓上の雑音の統計情報を高精度に得ることで，所望音や雑音の到来方向が変化する場合であっても逐次追従し雑音のみを効果的に除去することが可能となっている．しかし，人の発話位置と卓上の雑音の発生位置は，通常近接しているため選別には高分解能な方向推定技術が必要となる．これに対して，長短の異なる複数のマイクロホンペアを効果的に組み合わせたSPIRE（Stepwise Phase dIfference REstoration）方式を適用することで音源が近接している場合でも，高精度な方向推定を可能としている．開発した遠隔会議システムを実際の会議室で評価した結果，ビデオ会議中に会話の妨げとなる紙擦れ昔やキーボードタップ音を除去し，送話信号のSNR（Signal to Noise Ratio）を向上できることを確認した・また音響エコーキヤンセラとともに，システム全体としての動作を確認しており，開発システムをベースとしたビデオ会議システムが商用システムとして製品化されている．