胸部立位X線撮影におけるダリッドと散乱X線補正処理を併用したシステムの有用性

摘要

画像診断領域において,簡便でさまざまな疾患の描出や経過観察で幅広く用いられる単純X線撮影の重要性は高い.その中でも呼吸器,循環器の疾患などの早期発見,診断に有用である胸部立位X線撮影の件数は最も多く,そのうち6割前後は立位撮影が占めている.また,腰椎,膝関節,股関節撮影において立位撮影が有用であるとの報告があり,今後,立位撮影台の使用頻度の増加が予想される.立位撮影台では胸部,腰椎,膝関節,股関節など多岐にわたる撮影を被写体厚に応じて最適な撮影条件(グリッド比,管電流,管電圧,撮影距離)を決定し,診断価値の高い画像を効率よく提供しなければならない.胸部立位X線撮影は100-140 kVの高電圧撮影で10:1～14:1の高格子比グリッド,腹部,胸郭,脊椎系の撮影では70-90 kVの電圧で6:1～8:1のグリッドを使用する.そのため効率よく撮影部位毎にグリッドの交換が必要であり,それに要する時間や,落下などによる破損,グリッド比の選択ミスなどのリスク増大が懸念される.また,グリッド固定型のシステムにおいては撮影部位に応じたグリッド比の選択が不可能であり,最良な画質を得られていない可能性がある.