ハーフ再構成法を用いたCT画像の解像特性の評価

摘要

画像診断用のcomputed tomography(CT)装置の画像特性はこれまでに多数報告されており，解像特性，ノイズ特性，スライス感度プロファイル，時間分解能等が画質の基礎的な特性として評価されている.画像に含まれる時間の幅を示す時間分解能は，優れているほど動きのある被写体に対して強い特性をもち，モーションアーチファクトの低減効果が高い.この時間分解能を向上させる方法の一つに，ハーフ再構成法を用いた画像再構成法がある.通常のCT画像再構成理論では被写体の360度（1回転）分の投影データを必要とし，CT装置の時間分解能はX線管の回転速度に依存する.ハーフ再構成では180度+ファン角度の投影データにより画像再構成を行うため，X線管回転速度のおよそ半分の時間分解能に短縮することができる.そのトレードオフとして，画像再構成に用いる被写体投影データの投影角度が360度に満たないことによる画質の変化が予想されるが，ハーフ再構成CT画像の基礎的な画像特性の報告は少ない.近年のCT装置における検出器の多列化およびX線管回転速度の高速化に伴い，冠動脈造影CT検査や体動の多い小児CT検査でハーフ再構成が使用される機会が増え，再構成法の違いによる画質の変化を把握しておくことは重要である.ハーフ再構成において，再構成に必要とする投影データ数(view数）の減少による両加はいくつかの報告がある.また，ハーフ再構成に使用する投影データ取得時のX線管側と検出器側とでスライス面内の画質特性が不均ーであることが報告されており，X線管側は高解像度高雑音となり検出器側は低解像度低雑音であるとされている.ハーフ再構成CT画像の面内解像特性について高田らは定量的な評価を行った結果，画像再構成に用いる投影データ取得時のX線管側でmodulation transfer function(MTF)が向上，検出器側で低下し，それらのMTF値変動が低空間周波数領域で最大796みられたとしているが，回転中心から90mmの距離内でのMTFの変化は非常に小さくほぼ無視で`きると報告している.また，フル再構成と比較してハーフ再構成ではMTFの変動が大きいとしているが，測定されたMTFは360度各方向（全方位）のline spread function (LSF)を平均してMTFを算出している.フル再構成CT画像のオフセンタ位置での解像特性は異方的であることが知られており，ハーフ再構成CT画像においてもフル再構成と同様にオフセンタ位置の解像特性が異方性をもつ可能性がある.よって，全方位のLSFを平均し測定されたMTFの結果のみが示されている高田らの一連の報告では，異方性が平均化され解像特性の詳細が明白になっていない可能性がある.解像特性は画像特性の重要な要素を担い，異方性を考慮した全方位の特性を把握する必要があるが，これまでにCT画像のオフセンタ位置における360度各方向のMTFを測定し，全方位の解像特性の評価を行った報告は，フル再構成，ハーフ再構成ともにわれわれの知る限りなされておらず，ハーフ再構成CT画像の解像特性を一般的な再構成法であるフル再構成CT画像と詳細に比較検討した報告はみられない.