ネパール·ゴルカ地震後の混乱に想うこと

摘要

2015年4月25日に発生したネパール•ゴルカ地震の被害総額は71億ドルに上るとされる。これはネパールのGDPの約1/3に相当する。6月25日にカトマンズで開催された支援国会議では各国および国際機関から総額約44億ドルの支援が表明された。インドから10億ドル、中国から5億ドルであり、これが地勢的に両大国に挟まれたネパールの状況を象徴している。しかし世界銀行総裁のジム•ヨン•キム氏は「金額の多寡も大事だが、それ以上にそれがどのように使われるかが重要だ」と懸念を隠さない。政情不安な最貧国では、例えば2010年のハイチ地震のように約束された支援金額の一部のみしか支援に反映されず、これが復興を著しく停滞させかねないことへの警戒感の顕れである。実際、衣明された支援は未だにネパールで受け入れられる状況にない。それは直接的には受け皿となる復興庁がまだ組織されていないことによる。加えて内戦終結から7年越しの念願であつた憲法が地震後の9月に制定されてから、血縁•地縁的にインドとつながりの深い南部国境地域の人々が、彼らの既得権益が新憲法では保証されないとして反発し、実質的に国境が封鎖状態になった。このため100%近いガソリンやガスをインドに頼るネパールでは、これらの資源が払底する。カトマンズの街中のガソリンスタンドに通じる道筋には数えきれない車や人が列をなし、一回の上限15リットルの給油を数日も待っている。この15リットルすら受け取ることができる保証がない。国境を超えて物資や人を運ぼうとする大型車には、憲法に反対する人たちから石が投げられ、フロントガラスのない車が国道を行き来する。15人乗りのワゴン車に40人以上が乗り込んで移動する状況であるから、横転、転落事故も絶えない。復興どころではなくなつてしまったのである。