リスクと恵みのマネジメントとしての水の国土史

摘要

水は命の源であるとともに、時として炎害をもたらす。わが国は氾濫原植物であるイネを中心に発展してきたため、水のリスクと恵みの両面のマネジメントが国土開発の最大の課題であった。弥生時代に始まる本格的な稲作の導入以降、リスクと恵みのマネジメントは歴史的に積み重ねられ、知恵が蓄積されていった。繰り返しの災害を受けるたびに検証され、改良されていつた。現在、各地に伝統的な水のマネジメント手法が残っているが、その自然を見る目、社会を包含した仕組みの合理性、総合性に驚きを禁じざるを得ない。科学技術が進展する中で伝統的な水管理技術は過去のものになったかに見えたが、気候変動により想定を超える水害が頻発する中で、氾濫許容型であるが被害を軽減し、水の恵みを得るという歴史的な水管理の思想や技術は現代的な意味を持ち始めている。