コモンスペースの設計論に関する研究(その1): コモンスペースにおける地域への繋がりを目的とした設計思考

摘要

戦後の日本社会において、人々は会社や家族という閉鎖性の強いコミュニティを生活の基盤としてきた。しカ、し、そうした関係性のあり方を可能にした経済成長の前提が崩れるとともに、そのコミュニティのあり方は多様化している。その1つの例として、行政ではなく市民自らがニーズや地域性に則した公共サービスを展開していく動きがある。こうした新しい公共の一面として、NPO法人や任意団体、個人が設立運営する、民間による地域に開いたコモンスペース(以下CS)が各地で増加している。ここでのCSとは、地域の茶の間、交流の場、コミュニティ·カフェといった誰でも気軽に出入りでき、その場に集う人と自由に交流できる地域コミュニティの交流空間のことであり、行政による公共施設と比べれば小規模でささやかな設えだが、設計者や運営者の創意工夫で地域の日常的な居場所にしようとしている施設である。