篠原一男の住宅作品における複雑さに関するフラクタル解析による分析

摘要

本稿では、篠原一男の「カオス」という設計主題の様相のひとつである「複雑さ」に注目し、篠原の住宅作品における主平面図及び主立面図を抽出し、それぞれに現れた「複雑さ」をフラクタル解析により算出した。得た結果を篠原自ら定義した"様式"に基づき単純•複雑の変遷を迪つた。また、その変遷と篠原自らが述べている言説との関連を考察した。その結果、「複雑さ」という視点からみると、篠原の各様式の間に明白な単純'複雑という差異があるものの、言説および複雑さの測定結果により各様式の前後の作品において、前の作品は後の作品の傾向を先行していることがわかった。以上のことから、設計作品における複雑さの量の変化により、篠原の各様式の特徴を明らかにし、篠原の住宅作品における「カオス」の現出の様相を明らかにした。