中原暢子設計の長覚院におけるHPシェルと伝統の融合に関する研究

摘要

建築家中原暢子（以下、「中原」という）（1929-2008)は、国際女性建築家会議日本支部（UIFA JAPON)の初代会長を務め、日本文化に造詣の深い茶人建築家と称されるが、これまでその作品について多くを語られることがなかった。筆者らのこれまでの研究では、中原は機能主義、合理主義を掲げ「戦後モダニズム建築の極北」とされる池辺陽（1920-1979)(以下「池辺」という）に学び、「池辺の作品の中で最も和風の雰囲気を湛えた住宅」と評される「住宅No.28」（1955)の設計を単独で担当、1958年に独立、林•山田•中原設計同人（以下、「設計同人」という）を設立する。1961年「H.P.シェルと伝統の融合」と題した正林山長覚院浄泰寺（以下、「長覚院」という）が完成し、1966年頃から農家住宅「飯草邸」（未発表）の設計を契機に伝統的和風住宅へと回帰し、その後1969年擬洋風と和風の様式が併存した「水野レストラン」(未発表）の設計を経て、1981年頃より本格的な茶室設計を追求し、1985年「茶室のある家（自邸）」で一定の完成に到着する。その後は茶事プロデュースへとその活動を広げる。