メタボリックシンドローム·肥満症

摘要

メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の過剰蓄積を基盤とし,糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧のリスクファクターが個体に集積した動脈硬化性心血管病の易発症状態を指す.糖代謝異常,脂質代謝異常,高血圧は頻度が高い基礎疾患であり,旧来の予防医学ではこれらを独立した動脈硬化性疾患の単一リスクとして捉え,各々への対策がとられていた.しかし,1980年代後半になり,軽度ながら同一個体にこれらのリスクを複数合併する病態が臨床的に注目され,シンドロームX,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,内臓脂肪症候群として提唱されるようになった.これらはマルチプルリスクファクター症候群とよばれ,リスクファクターが偶然ではなく,上半身肥満(あるいはそれに起因するィンスリン抵抗性とするものもある)の存在下において必然的に集積するという共通した疾患概念であつた.メタボリックシンドロームの呼称は,Reavenが提唱したシンドロームXと循環器領域で使われていた(cardiac)シンドロームXを区别するため「メタボリックシンドロームX」となったものが,さらにXがとれて「メタボリックシンドローム」という経緯で生まれた.その後,基礎医学的研究の発展により,内臓脂肪の過剰蓄積がァディポネクチンに代表されるアディポサイトカィン(脂肪組織由来生理活性物質)の分泌異常を引き起こし,さまざまな代謝異常に関与していることが解明され,メタボリックシンドロームの概念の裏づけとなつた.