心臓外科医による心不全治療の新しい展開

摘要

1. 重症心不全に対する治療は，補助人工心臓か心腹移植しかなく，われわれは本邦における臨床成績を報告し，その臨床的有用性を実証してきた． 2. 最近，補助人工心臓による治療は進歩し，より小型で耐久性に優れた第二，第三世代の定常流補助人工心臓による臨床応用が始まっている． 3. 心臓移植はすでに確立された治療法であり，深刻なドナー不足のため，移植を受けるにいたらない患者も多いが，末期心不全治療において心移植の果たす役割は大きい． 4. 一方，再生医療は，自己細胞を用いた治療がようやく始まり，わが国発の細胞シート法などが成果をあげ始めている． 5. 今後は多様な治療法が組み合わされ，重症心不全の治療成績が向上していくことが期待される．