糖尿病医療学とEBM

摘要

1. 糖尿病診療におけるEBMは，1990年代の臨床試験(DCCT, Kumamoto, UKPDS)がその端緒となった.これによってすベての医師が同一の基準で糖尿病治療が行えるようになった.2. 2008年に発表された臨床試験(ACCORD, ADVANCE, VADT)は，治療が単純に普遍化できるものではなく，個人の身体的状況によって個別化することが必要であることを明らかにした.3. これを受けてADA/EASDは，2型糖尿病治療の個別化，患者の価値観や選好を重視すべきであるとの見解を示した.4. 患者中心という方向で考えると，実臨床において，きわめて多様な要素が治療アウトカムに影響する.課題の中心は患者の身体および心理社会的状況にあるが，その対処の中心は医師(医療者)-患者関係にある.糖尿病医療学はそれらに焦点を当てて，一例一例を考える領域である.