1.5GHz帯マイクロ波局所ばく露によるラット内温度上昇のモデル化

摘要

マイクロ波ばく露による人体への支配的影響は,電力吸収により生ずる熱作用とされ,その評価量としては単位質量当りの電力吸収量,すなわちSAR（Specific Absorption Rate[W/kg】：比吸収率）が用いられている.電波防護指針では,局所ばく露に対して局所質量平均SARを指標として指針値が設けられているが,熱生理の観点から指針値根拠に関する更なる検証が求められている.また,世界保鹿機関による最優先課題では,マイクロ波照射による子僕の温度上昇の熱生理を考慮した検討が挙げられている.本論文では,ラット頭部への局所ばく露時の局所SARと温度上昇の定量化を目的とし,実測値に基づいて麻酔下のラット脳血流を定式化し,頭部局所ばく露実験を模擬した電磁界・熱混成シミュレーションに組み込んだ.ラット成獣,幼獣を対象としたばく露実験で得られた温度上昇をシミュレーション結果と比較することにより,提案手法の有効性を検討した.その結果,成獣,幼獣とも脳血流は体内深部温度上昇のみではなく,脳局所温度にも依存することが分かった.また,本解析モデルより得られた温度上昇は,実測値と良い一敦が得られることを確認した.更に,対象としたラットの脳表温度上昇は,測定位置の影響を受けやすいことも示した.