疑似線形理論による発振回路注入同期現象の定式化: 紙と鉛筆でロックレンジとQファクタを探求する

摘要

発振回路に外部信号が注入されると内部での信号位相が変化，注入信号周波数が自走発振周波数に近ければ発振周波数が注入信号に引き込まれる.この現象を各節点電圧の複素（I-Q）平面上のべクトルで表現する.注入信号の電圧と周波数を独立に掃引して，同期するかどうかを判定しマップ表示する.注入電圧を上げるかまたはQファクタを下げれば同期帯域幅が広がる.1個のFETと複数の受動素子からなる能動回路を記述できる一般モデルを示す.受動部分を3ポート網とみなして3×3インピーダンス行列で特徴づける.この行列要素の周波数特性によって回路の発振周波数とりファクタが決定する.その行列要素のうち，注入端子からゲート電極への結合インピーダンス，並びにドレイン電極からゲート電極への結合インピーダンスが注入同期発振の特性を定める支配的役割を果たす.得られたQファクタの値をアドラーの式に代入することにより注入同期周波数範囲を見積もることができる.つまり，回路図→ポートパラメータ→Qファクタ→△_ωという手順で同期範囲を見積もることが可能となった.本論文で述べる手法はSPICEなどの時間領域シミュレーションに比べて格段に見通しが良くかつエレガントである.