統計の基礎的事項

摘要

医療保険者は、データに基づき保険者機能を発揮することが求められている。このため、保険者のデータ活用に資するよう、基礎から保健•医療保障•介護の統計をみていく。なお、長瀬恒蔵氏の「傷病統計論」(1935年、昭和10年発刊)からも示唆を得ていく。実務で必要となるいくつかの統計の基礎的事項を確認している。まず、本誌前月号で掲載した単純な具体例を用いて、「特定のケースが標本抽出により抽出される割合は、標本が大きくなると理論上想定される割合(確率)に近くなる」ことを実験で確認する。次に、入院レセプト1件当たり点数の分布を例に、「標本が大きいと、母集団の分布がどのようなものであつても、標本平均の分布は、母平均を平均とする正規分布で近似でき」、前月号でみたチエビシェフの不等式の場合よりはるかに狭い(効率の良い)95%信頼区間が得られることを示す。標本調査の結果を用いた「留保付き判断」（95%信頼区間など）は、無作為抽出、標本の大きさ、正規分布による近似という重要な根拠によるものである。