統合評価モデルを用いた気候緩和策分析および新シナリオプロセスにおけるその役割

摘要

IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)のSRES (Special Report on Emissions Scenarios)が2000年に公表されて以降，世界の気候変動関連のモデル研究の多くはSRESを用いて行われた。多くの有用な研究成果が生まれたが，いくつかの課題も残った。そこで，その課題を乗り越えるために，新しいフレームワークを用いたシナリオ開発(以降，新シナリオプ口セスと呼ぶ)が2008年以降始まった。本稿は，まずその新シナリオプロセスの概要と統合評価モデル(IAM：Integrated Assessment Models)が提供することになったシナリオ群について解説する。次に，その定量化作業に用いられたモデル群を簡単に述べ，そのモデル群の中の一つである，著者らのモデリングチームが使用したAIM/CGE (Asian-pacific Integrated Model/Computable General Equilibrium) (Fujimori et al., 2012•2014; Hasegawa et al., 2014)と呼ばれるモデルについて概説する。