低炭素社会に向けた究極の省エネビルへの取り組み: ZEB（ネット•ゼロ•エネルギー•ビル）の実現に向けて

摘要

究極の省エネルギービルであるZEBの実現に向けての取り組みが注目されている。ZEBの概念は，2008年洞爺湖サミットにおける国際エネルギー機関（IEA）による勧告にも示されており，EUや米国で先行した取り組みが行われている。日本では，経済産業省資源エネルギー庁に「ZEBの実現と展開に関する研究会」が設けられ，その検討結果が2009年11月に，提言としてまとめられた。この提言では，今後のわが国の建築物のZEB化に向けた新たなビジョンとして，「2030年までに，新築建築物全体でZEB化を実現する」ことが示された。なお，このビジョンでは，日本全体での目標達成を目指しており，個々の新築建築物全てをZEB化するという意味ではない。言い換えると，建物用途や規模により達成が難しい場合もあるが，建物によっては再生可能エネルギーなどの活用によりエネルギー消費をマイナス（創エネルギー）とすることが可能な建物も考えられ，新築全体の総和としZEB化を目指すという趣旨であることが示されている。ZEBの実現は，2014年に閣議決定された「エネルギー基本計画」にも明記され，その実現に向けての具体的な取り組みが求められている。