オフィスにおける多機能トイレの利用実態とそのあり方オフィストイレのオールジェンダー利用に関する研究 その4

摘要

調査・分析の結果、以下のことが明らかとなった。1）オフィスに多機能トイレがない、あるいは少ないことについて、シス・トランス共にストレスを感じている者がいるが、シスよりもトランスの方がその傾向が強い。まずはオフィスに多機能トイレを設置することが重要である。それは、障害のある者にとっても必要なことである。2）多機能トイレが設置されていても、利用しにくい、あるいは利用できない状況がある。単に設置するだけでなく、必要な人が気兼ねなく利用できるような運営や環境づくりが求められる。3）トランスの中でもオフィストイレ利用の希望と実態が一致している者より不一致の者の方が、多機能トイレの設置や利用に関するストレスを感じている割合が高い。本来、利用したいトイレを利用できることは人権のひとつであり、その実現には、トランスが働きたい性別で働くことができる環境の整備が重要である。4）多機能トイレの利用度合はシスよりもトランスの方が高いが、トランスの中には日常的に利用していても、望hでそうしている訳ではない者、利用しない者もおり、「トランスジェンダーへのトイレ配慮＝多機能トイレ」と短絡的に結び付けることはできない。5）オフィスの多機能トイレにおけるシス・トランス両者の日常的利用理由と利用する時の状況を統合すると、多機能トイレではない「性別に関係なく、落ち着いて利用できる、独立した個室トイレ」という潜在的ニーズが推察される。