途上国防災の現実と課題: 土木と国際開発の2つの視点から

摘要

本誌は土木業界を代表する雑誌である。したがって，土木を持ち上げる寄稿が内容としてはふさわしいかも知れない。しかし，本寄稿の本題「途上国防災」では，どうも土木技術の役割が釈然としない場合が少なくない。国内では，防災とは工学，とりわけ土木であると極言しても大きく外してはいないと思うが，海外，特に途上国では必ずしも正しくない。「途上国防災」と「土木」ではオーバーラップしていない部分が多いにも関わらず，日本のODAで実施される防災プロジェクトの従事者は土木関係がやはり圧倒的に多い。このギャップの結果，従来の土木技術者としての領域を大きく超える課題が個人にのしかかるケースも少なくないと思われる。