民俗学から選択と集中を考える

摘要

四国三郎吉野川。その上流に位置する徳島県東みよし 町には、樹齢千年とされる国指定特別天然記念物「加茂の 大クス」がある0,。東西52m、南北42m、高さ26mに及ぶ その枝張りは、すべての方向にほぼ均等に広がった美しい 樹形を誇っており、町のシンポルとして住民に親しまれて しヽる。 筆者は、ここ数年、加茂の大クスをシンボルとする地域コ ミュニティづくりについて、環境民俗学の視点から調査を続 けている。環境民俗学が扱う「自然」とは、「人間の手の加 わった自然」であり、この意味での自然と人間のかかわりの カラクリを明らかにすることが環境民俗学の課題である。特 に、筆者は、自然とのかかわりを通じて築かれる人間相互の 関係、地域コミュニティの形成に関心を持っている。その意 味で、加茂の大クスは格好の研究対象なのである。本稿で は、この事例を手がかりに、選択と集中について考えてみ たし、。